素直に
第35章
     35
 二〇一二年の三月下旬、僕はマンションの郵便受けに入っていた院の合否通知を手にする。


 封筒を開けてみると、合格した旨が綴ってあり、追って入学手続きをすべきことが書いてあった。


 僕はすぐにケータイを手に取り、フリップを開いて、慧子に連絡してみる。


 すぐに電話が繋がり、


「はい」
 

 と言う声が聞こえてきた。


 ――ああ、俺。栄司だけど。……合否通知届いてるだろ?


「ええ。合格してたわよ」


 ――よかった。俺も合格してたんだ。


「じゃあ、これからは一緒に院で勉強できるわね」 


 ――ああ。君は専攻が確かドイツ地理学だったよな?

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