素直に
 と言ってきた。


「そう?そうでもないと思うけど」


「いや。栄司は料理の腕がいいわよ。だって美味しいもん」


「だったらいいんだけど」


 確かにまずいと言われるより、美味しいと言われた方が嬉しい。


 僕たちは食事を取りながら、和やかに語り合う。


 普段はドイツ語の勉強ばかりしているので、僕も慧子も食卓ではその手の話はほとんどしない。


 だけど僕自身、院に進学すれば、研究はしっかりとやるつもりでいた。


 学費もまた掛かる。


 当然ながら、奨学金も借り続けないといけない。


 だが、そんなお金は将来研究者になって稼ぎ出せば、訳なく返せるのだ。


 学者は給料をたくさん取るのだし、僕も慧子もそういったものを志していたから、大いに勉強しようと思っていた。
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