素直に
 確かに准教授として佳久子がいるが、僕は真剣に相手する気はない。


 まあ、何はともあれ、院に入学する手続きは自分たちでしていたのだし、一緒の大学院にいる以上、僕たちの仲もこれから更に深まっていくものと思われる。


 研究生活は続く。


 与えられた時間を使いこなしながら……。


      *
 あれこれ研究しながら、二年後の冬の終わりに、僕たちは修士論文を提出した。


 教官たちが教授会で揃って、査定をする。


 論文自体は原稿用紙に三百枚ぐらいで済んだ。


 多分通るだろうなと思いながら、僕たちは二〇一四年の春先を過ごす。


 僕も慧子も互いに同じように、博士課程に進むための試験勉強を続けていた。
 

 日本の大学院――しかも博士まで行くとなると、専門性はかなり高い。


 僕たちは抜かりがないように勉強していた。


 博士課程は昔と違って、今はそんなにハードルが高いわけじゃなかったが、僕もしっか
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