素直に
「栄司もしっかり先生をサポートしてね。あたしもそうするから」


 ――分かってるよ。一々言われなくても、俺もそうするつもりだからさ。


 僕がそう言って、ケータイ越しにヘヘヘと笑った。


 僕たちはこれからまた三年間、研究室の空気を吸うことになる。


 確かに二〇一四年の四月からも研究室のパソコンでドイツ語の原典をネットで見て、必要な分はフラッシュメモリに落としながら、授業があるときは欠かさず出席していた。


 僕も慧子も研究に精が出る。


 十分満足出来ているのだった。


 そんな日々も淡々と流れていく。


 夏の暑いときも、冬の寒さがきびしいときも、僕たちは大概研究室に来ていた。


 そして研究を続ける。


 慧子はドイツ地理学が専門だったし、僕はゲーテの『ファウスト』が専門分野だ。


 専攻こそ違っているが、やっていることは大体同じなのである。

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