素直に
 僕たちは一緒に研究室に入り、帰るときは揃って出ていた。


 大学院の博士課程というと、かなり専門的でマニアックだ。


 ドイツ語の達人を育成する研究機関だから、皆が当たり前にドイツ語で講義を受けたりしていた。


 僕も日常会話レベルから、やや専門的なドイツ語まで聞き取れるようになっていたし、実際そうじゃないと研究は出来ない。


 講師や准教授などに日本在住のドイツ人がいたからだ。


 そういった人間たちと対等に渡り合うにはコミュニケーションツールとして、ドイツ語をマスターすることが不可欠なのだった。


 そして僕もドイツ語でドイツ人の教員と話をし、自身の研究に深みが増しているのを感じ取っている。


 慧子もかなり優秀で、僕よりも成績がよかったし、将来的には上原研究室で助手ぐらいにはなれそうだった。


 れっきとした幹部候補である助教はまた仕組みが少し違う。


 各大学が、助手の中でも講師や准教授、教授と上のポストに上っていく人間たちを選抜して、助教に据えている。
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