素直に
 僕たちは先生たちのお手伝いをする助手でも十分満足なのだが、何せ大学の助手は給料が安い。


 それよりもちゃんと勉強して、上へと向かう方が一番いい。


 誰もが研究室を持ちたい願望に駆(か)られるのだ。


 大学というのは実に不思議な世界である。


 僕たちは知らないことがまだまだ多すぎた。


 そんな未熟者を上原教授は指導してくれる。


 おそらく僕たちも先生に就いて、ドイツに関する研究を続けていけるだろう。


 まあ、順当に行けば、の話だが……。


 そして月日は一年、二年と過ぎ去っていく。


 僕たちは授業の合間を縫って、二千枚を越える論文を執筆するため、パソコンのキーを叩き続けていた。


 新鮮味が乏しい毎日だったが、それでも構わないと思っている。


 合間にティーチングアシスタントとして、学生に配るレジュメを作成したりもしていた。
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