素直に
 忙しい毎日が続く。


 それからいよいよ、揃って博士課程の論文を出し終え、その査定が行われる手筈となった。


 僕たちはこれに受かれば、Ph.D.の学位をもらえて、一応当面の研究生活が保障される。


 院を終了する三年の冬に、僕たちは上原先生から直々(じきじき)にお呼びが掛かった。


「これから君たち二人を本学の文学部ドイツ語学科で助手として雇いたい」ということで、僕たちはそれを聞いて素直に喜べている。


 いよいよ本格的な研究生活の始まりだ。


 だけど研究に終わりはない。


 知識というのは知れば知るほど面白くて、興味が増すからである。


 それは無限に続いていくものだった。


 僕たちは博士号の授与式に出席し、力が漲(みなぎ)っていくのを感じる。


 これがスタートラインに立ったときの気持ちだということを忘れずに……。
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