素直に
 その代わり、お互い目指す道はあった。


 あったというか、僕も慧子も大学院まで進んで、研究したかったのだ。


 もちろん大学院となると、なかなか簡単にはいかない。


 僕たちのいる秋光(しゅうこう)大学は西日本にある一私立大で、そんなにレベルが高いわけじゃないのだが、大学院進学は極めて困難だった。


 僕も慧子も二年生まででドイツ語を一通り勉強していたのだが、さすがに喋れない。


 それに僕もドイツの文学作品は文庫本などで読んでいるだけで、詳しいことはそんなに知らないのだ。


 さすがに三年生にでもなれば、二年生までの基礎ゼミと違い、本格的なゼミが始まるし、皆が結構本気になりだす。


 僕たちはその日もカフェまで歩きながら、学内を散策していた。


 二〇一〇年の後期の授業が始まった九月の中頃は、一ヶ月前の暑さがウソのように引いている。


 僕も慧子も秋光大学に遊びに来ているわけじゃない。


 元々出身地は違うのだが、僕は高校時代、進路に関して相当悩んだ。
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