素直に
 この九年間、いろんなことがあったが、何かあるたびに乗り越えてきた。


 僕たちは自分たちに対し、課されたハードルが高かったにしろ、一つ一つを超えていけたのだ。


 そして今、秋光大文学部で助手という職業にあった。


「ちょっと外で飲もうか?」


「外で?」


「ああ。この近くに丘があるだろ?そこで缶ビールでも飲みながら酔おうよ」


「いいわね。初夏の風に吹かれて」


 慧子が頷き、僕たちはコンビニで缶ビールを二本ずつ、合計四本買う。


 それから丘へと向かって歩き出した。


 歩きながら、思い起こすこともたくさんある。


 互いにそうだろうと思う。


 僕は摘みにポテトチップを、彼女は裂きイカを買っていた。

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