素直に
「お疲れ」


 と言い合い、ビール缶に口を付ける。


 ゴクリゴクリと喉を鳴らしながら、僕たちは夜のアルコールタイムを楽しむ。


 研究が忙しくて、久々に飲んだ気がした。


 アルコール分や糖質がかなりカットされたものを。


 そして二缶目を空け、軽く酔いが入ると、僕たちはどちらからともなく寄り添った。


 そのままストレートにキスし、抱き合う。


 重なり合いながら、頻りに口付けを交わし合った。


 やはり求めていたのである。


 人間にとって一番原初的な欲求である愛情というものを。


 やっと互いの心に素直になれた。


 僕たちは互いに歩んできた道を走馬灯(そうまとう)のようにして回想しながら、体を重ね合う。


 人っ子一人いなくて、誰も見ていない。

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