素直に
 だから、僕たちは遠慮なしに抱き合い続けた。


 ゆっくりと夏の始め頃の、少し暑くなり掛けている季節を味わう。


 暖気が僕たちの体を包み込んだ。


 僕も慧子も何も言うことはない。


 ただ、抱き合うだけで。


 愛は終わらない。


 それはまるで夜空を彩(いろど)る星座が変わらないのと一緒だ。


 僕たちは体が徐々に熱くなっていくのを感じていた。


 極自然なのである。


 愛し合う者同士にとって。


 まだ二十代の僕たちにとって、先は長い。 


 やっと助手にまでなれたのだから、未来は明るいのだ。


 抱き合う手を止め、二人きりで夜空を見つめる。

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