素直に
「あたしたちの先輩で、秋光大の院終了して、今、この街のカルチャースクールでドイツ語教えてる人がいるの」


「それってもしかして、市丸さん?」


「知ってるの?」


「ああ。市丸さんは名物男らしかったからね。ドイツ語も普通に喋れるし」


「あたし、あの市丸さんみたいにいずれはどこかでドイツ語教えたい」


「それはカルチャースクールとかで?」


「ええ。……それか大学に勤務して、講師か助教(じょきょう)、助手ぐらいから入るとか」


「つまり君は就職する気は全くないんだね?」


「うん。だっていつも言ってるでしょ。大学でドイツ語勉強してたら、就職口なんかないって」


「俺もそう思う。文学部でもドイツ語専攻っていうと、マニアが集まるところだからな」


「そうね。あたし、大学の入学案内をホームページで見て、入学した時点から研究者目指してたから」

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