素直に
 夏場の疲れは出てくるのだが、僕たちは二十代でまだ若いので平気だ。


 さすがに秋光大のキャンパスでも、教員の研究室があるビルには、連日疲れきった感じの先生たちがチラホラ出入りしているのが分かる。


 僕たちは普段キャンパス内を歩きながら、それを具に感じ取っていた。


 上原先生のゼミは確かにいいが、必須科目である綾邊のドイツ語原典講読は一際悪評高く、出席しない学生も大勢いて、盛り上がりに欠けている。


 大概、大学でも文学部は一年生から基礎ゼミが始まるところが多い。


 しかも秋光大文学部は小所帯なので、学生数も少なく、僕たちも大学に来ていない連中が大勢いるのを知っている。


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