素直に
 確かに地方の進学校にいたので、本来なら偏差値で二流半ぐらいの秋光大に行かなくても、東京の方にある名門大学に進んでもよかったのだ。


 だが僕は自身の読書体験から、ドイツ文学に興味を持っていたので、文学部に進学するつもりでいた。


 実際学校の担任からも、


「君は勉強できるんだから、秋光大なんか行かなくてもいいだろ?」


 と言われたことがある。


 僕自身、そんな大学のブランドでしか学生の進学先をアドバイスできない担任に嫌気が差していたのが実情だ。


 僕は結局私立文系コースで、高校三年生の一年間は勉強したし、同級の点取り虫のようなヤツが大勢いる学校の雰囲気が正直なところ嫌いだった。


 所詮私立の進学校など、学生を難関大に進学させるのだけが関の山で、それから先のことはまるで考えてない。


 無責任なのだった。


 だから、僕はあえて模試の志望校記入欄には<秋光大学文学部>と書いていたし、担任教師からは何かと煙たがられていたのだ。
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