素直に
 実は同級生に高井という男子学生がいるのだが、高井はキャンパスに滅多に寄り付かない。


 僕も、今目の前で髪を洗っている慧子も、彼のことは知っていた。


 高井は大学の授業がつまらないらしくて、必須科目にも出ずに、単位を落としまくっているようだ。


 おそらく留年、もしくは中退という形になるだろう。


 今時、大学中退というのは珍しくない。


 学生がいったんキャンパスに足を踏み入れて、感じる矛盾点はたくさんあるからだ。


 僕たちは院まで進学するつもりなので、当然ながら大学には通い詰めていた。


 ほとんど皆勤賞と言ってもいい。


 それに僕自身、慧子と共に院を出たら、入籍するつもりでいた。


 お互い、これからは研究者になる者同士だ。


 別に結婚したところで珍しくないだろう。


 僕は慧子がシャンプーした後、リンスとコンディショナーまでするのを待って、自分も
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