素直に
 何せ昼間から酒を飲んで、死んだ母に暴力を振るい続けていたのだから……。


 母は今から十年前に急性の脳梗塞で倒れて、病院に運び込まれたが、手遅れで亡くなった。


 おそらくオヤジとの生活が心労になり、離婚したいということを最後まで言い出せないまま死んでいったのだろう。


 それに僕は母が亡くなる日まで、そして亡くなってからもずっと堪(た)え凌いできた。


 今、オヤジは地元の県の山奥の施設にいる。


 僕自身、高校を卒業して全然会っていない。


 今更会おうとも思っていないのだし。


 ただ、母の法事などが行なわれるときは伯父夫婦が来てくれていたので、僕も出席していた。


 オヤジはどうやら認知症のようで、もう社会に出て働くことは無理だろうと思われる。


 僕はそんなオヤジと事実上絶縁したのだった。


 そして今、この街で慧子と共に学生生活を送っている。

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