素直に
 僕と慧子が知り合ったのは、大学一年のときの新歓コンパの席上でで、酒を飲みながら話す機会があった。


「河岡君」


「何?」


「ここ騒がしいわね」


「ああ。……君、確か川島慧子さんじゃなかったっけ?」


「ええ、そうよ。よく知ってるわね」


「四月の始めに新入生ガイダンスがあったじゃん。そのとき自己紹介で言ってなかった?」


「うん。よく覚えてるわね」


「俺、記憶力だけは結構いいんだ」


 僕がそう言って、ヘヘヘと笑う。


 慧子も釣られて笑った。


 僕たちはビールをジョッキに軽く一杯飲んでから、四月の夜の陽気を感じ取り、コンパの開かれている学食を揃って抜け出す。

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