素直に
 慧子は僕のように特定の文学者を研究するんじゃなくて、ドイツの地理や民族史などを勉強したいようだ。


 実際、彼女はその方向で文献を読み進めていたようだし、今、ネット上ではドイツ民族史等はたくさん調べることが出来る。


 パソコンにネットが繋がっていれば、図書館など要らないに等しいのだ。


 僕も研究室には行くのだが、上原先生が研究棟から研究室に出てこられることはほとんどない。


 僕自身、四年生や大学院生など、先輩学生の人たちと共同で勉強会をしていた。


 大概ドイツ語の研究室にはマニアックな人が集まることが多い。


 僕も例外なしにその一人なのだった。


 確かに連日、秋の気配が濃厚に漂いつつあるので、涼しくなってきた分、勉強をしっかりやるのが一番いい。


 それに慧子も学科では数少ない女子学生の一人として、僕や先輩たちの学習会に参加していた。


 秋は大抵どこの大学でも学会がある。

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