素直に
“ドイツ語って奥深いんだな”


 と思っていた。


 さすがに秋光大の名物教授は違う。


 僕と慧子が知り合ったのは、大学一年のとき開かれた新歓コンパだったが、ドイツ語基礎講座でも隣り合わせの席にいた。


 その時点で僕は決めていたのだ。


「いずれ院まで行って研究者になろう」と。


 大学四年間と、院でも博士まで行けば五年間の計九年間は奨学金をもらい続けながら、合間に慧子と過ごしたり、バイトしたりしながら生活するつもりでいた。


 文系の、しかも文学部というのは、ポストが空かないと、そこに入ることは出来ないのだ。


 僕自身、最初は院を出れば助手ぐらいからスタートだろう。


 あくまで順当に行けば、の話だが……。


 それに都合よく空席が出来ることなどはまずありえないのだし……。

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