素直に
第11章
     11
「河岡君」


「はい」


「君は大学に残るんだろ?」


「ええ、そのつもりですが」


「しっかり勉強しなさい。まだ若いんだし」


「はい」


 十月初旬、僕は上原ゼミに出席した後、上原先生の研究室を訪れ、本人からそう言われた。


 大学の講義は基本的に九十分だ。


 僕にとって一番大事なのは、ちゃんと学校で勉強が出来ることである。


 幸い、秋光大にも教官が学生の相談に応じる、オフィスアワーと呼ばれる時間があった。


 僕は上原先生の研究室にお邪魔することが結構ある。


 資料が山積みしてあって、しかも整理整頓まできちんとなされてあった。
< 56 / 204 >

この作品をシェア

pagetop