素直に
ので、上原教授とも対等に渡り合える。


 要は僕自身が、いずれは先生の学識を超えてしまうのだ。


 院生というのは修士ぐらいまでだと教員から研究に関して散々突っ込まれるのだが、博士課程ともなると、相手を超える。


 僕は正直なところ、上原教授を追い抜くところまで行けるのを感じていた。


 それはこうやってオフィスアワーの最中に話をしていることでも分かる。


 現時点で対等に話が出来るところまでは行かないにしても、僕と上原先生は互いに専門のことに関して、丸々一時間ぐらいは話せた。


 さすがに上原教授は苦労された方だ。


 大学在学中は家庭教師センターに登録し、秋光大学文学部大学院ドイツ語専攻課程の修士まで行った後、いったん一般企業に就職した。


 だが学問に対し、未練や執着心というものがあったのだろう、入社して五年後に退社して、院の博士課程に再入学した。


 所定の単位を取り終えてから、論文も出して博士号を取られたようだ。


 ワープロが普及し始めてから執筆したドクター論文は実に原稿用紙二千枚である。
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