素直に
 そういった点で、僕も慧子も一般的な就職を断念し掛けている側面がある。


 紛れもない事実なのだった。


 僕が模範解答となる解答例を暗記した後、問題の方を見て、一つ一つ当てはめていく。


 時間を掛けて丁寧に。


 先に答えを覚えるのは学生にとって、勉強では一番手っ取り早い方法だ。


 大概、毎年似た問題が出題されていて、僕たちは問題の出題パターンを丸暗記してしまう。


 要は基礎が出来ているので、後は応用だけなのだった。


 いつの間にか午後五時過ぎになり、カフェには僕たち以外ほとんどいなくなる。


 二人で勉強しながら、最後まで居残っていた。


 カフェが閉まる午後六時になるのを見計らって僕も慧子も過去問の載っている問題集を閉じ、シャープペンシルと消しゴム、それにコンパクトタイプのドイツ語の辞書を仕舞い込んで、立ち上がる。


 並んで歩き、僕たちは夕食を取るため、学食へと向かった。

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