素直に
 僕は慧子の風邪が早く治るよう、祈っていた。


 秋の風邪は一際性質(たち)が悪いからだ。


 僕もそういったことは知っていた。


 暖房を付けて、エアコンの空気清浄装置を稼動させ、部屋の中の空気をなるだけ温かく綺麗にしながら、慧子に付き添う。


 まだ相変わらず咳は出るようだった。


 風邪薬は足りているらしい。


 僕は時々、一リットル入りのペットボトルに冷たい水をたっぷり入れて、彼女に渡した。


「水分取れば、だいぶ治るよ」


「分かってる。実際、シャツの下にじっとり汗掻いてるから」


「でも、まだきついだろ?」


「ええ。だけど、早めに手を打ったからすぐに治りそう」


 慧子は一昨日の明け方、レポート執筆のため、徹夜したようで寝不足から風邪を引いたらしい。
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