素直に
 それにもうすぐ学園祭が始まるので、学生が盛んに行き来する。


 確かに大学で行なわれる学園祭は青春の証だろう。


 僕たちもそう思っていた。


 だが、参加するほど学校に打ち解けていない。


 いや、打ち解けていないというより、僕も慧子も大学に勉強しに来ていて、将来研究者になるつもりでいたから、大学のお祭り騒ぎにまるで関心がないのだ。


 僕たちは必要な授業は受けに行く。


 学費を払っているので当然だろう。


 でも、不必要な学校の行事には一切参加しないつもりでいた。


 来年四月でいよいよ四年生だ。


 大学に入った頃はドイツ語のドの字も知らなかった学生が、専門の研究に打ち込んでいくうちに、研究者並の学識を身に付けられるようになっていく。


 僕自身、思っていた。


「いずれは上原教授を超えてみせる」と。
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