素直に
を教えたいと言っていたのだから……。


 僕は歯を磨いて、洗顔フォームで洗顔してから顔をタオルで拭き、洗面所を出た。


 バスルームには二十代女性特有の、シャンプーやコンディショナー、ボディーソープなどの甘い残り香が漂っている。


 僕はそれを嗅ぎ付けて少し照れながらも、リビングに置いていたカバンにちゃんと必携品が入っていることを確認した。


 そしてそれを持ち、慧子を起こさないようにして、部屋を出る。


 扉が閉まると、外はまるで別世界だ。


 日差しが穏やかで、あちこちから鳥のさえずり声が聞こえてくる。


 僕は一気に大学のキャンパスまで向かった。


 学生街らしく、途中には安い食堂などのいろんな店が並んでいて、僕は朝食を食べていたのであえてスルーする。


 正門を潜(くぐ)り、上原研究室へと入っていく。


 今日はパートナーがいないので、単独で研究室へと向かう。

< 86 / 204 >

この作品をシェア

pagetop