素直に
 朝方だったが、上下ともレディースのスラックス姿の青沼佳久子が来ていた。


 僕に性的な授業をした、当の准教授だ。


 目を伏せて、置いてあるデスクトップパソコンの前に座り、マシーンを起動する。


 そしてネットに繋ぎ、文献の渉猟(しょうりょう)を開始した。


 もちろんパソコン本体に手持ちのフラッシュメモリを差し込んで。


 卒業と同時に、院への進学がほぼ固まっている以上、僕は気が抜けない。


 午後からは綾邊の授業があるが、おそらくまともな講義はしないと思う。


 ただ出席カードの提出だけで済むようだから、安心していた。


 僕は時間を有効に使うため、キーを叩き、検索窓に単語を入れて検索を掛ける。


 皆、ほとんどの学生がそういった作業に追われていた。
 

 佳久子は今日、この研究室を監督するのが仕事らしく、僕も極力目を合わせないようにしている。


 何かがあるとまずいからだ。

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