素直に
シルや消しゴム、ノート、ボールペンなど、学生なら誰もが持つものを入れて持っていた。


 歩きながら、キャンパスのあちこちに学園祭の雰囲気が流れ出しているのを感じ取る。


 もうそろそろ十月も半ば過ぎだ。


 どこの大学でも年に一度の祭りがある。


 僕も慧子も参加するつもりはないが、秋光大のようにマンモス大学だと、とにかく人数が多い。


 学園祭開催中は授業が休みになる。


 その代わり研究室は開きっぱなしで、学生が自由に利用できた。


 僕は来る学園祭の最中は溜めていたデータの整理をしようと思っている。


 おそらく研究室が開いてても、何かと喧(やかま)しくて、研究に没頭できる雰囲気じゃないようだから……。


 それに慧子を見舞わないとまずいし……。


 ほんの三日間ぐらい大学全体が燃え上がって、後は通常通りとなるからである。


 僕もその間は、家にいようと思った。
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