ギブ・ミー・ヘブン
タクシーを降りて里奈を探す。


ロビ前ではホストクラブのキャッチが溢れている。


里奈を見つけて駆け出した矢先、何かにぶつかって思いっきり転んでしまった。



早く立ち上がりたいのに、足が痛む。




「大丈夫?」


私の手を引いて立ち上がらせてくれたのはホストだった。
訊かなくてもわかるような風貌だった。



「…ありがとう。」


ご丁寧にそのホストは転んで白くなった私のコートの雪を払ってくれた。



俯いた顔を上げた私は驚いた。




彼が私をじっと見ていたから。


「…何かついてる?」


そう聞くと彼は

「なんでもない」


そう言って立ち去ってしまった。


入れ替わるように里奈が現れ、私を抱きしめた。


「辛かったね。今日は飲んで忘れちゃお。」



泣きそうになって瞼を閉じると雄一の顔が浮かんだ。
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