ギブ・ミー・ヘブン
「冷蔵庫の中以外に充実してるね」

嵐は勝手に食材を取り出して、

「伊織ﾁｬﾝ、シャワー入ってすっきりしたら？吐いてひどかったじゃん」
そう言って料理し始めた。

確かに床に脱ぎ捨ててある服にはそれらしいものが着いていて、吐いたのは間違いないようだ。
それにしても私はいつの間に自分の名を名乗ったのだろうか。


二日酔いで酒の抜けきらない頭では今の状況を冷静に判断出来ないと思い、言われるがままシャワーに入った。


熱いシャワーを浴びながら必死に思いだそうとしても、昨日のシャンパンコールまでしか思い出す事が出来ず、情けなさを感じながらシャワーから上がった。

着替えてリビングに戻るとテーブルの上にはおかゆと味噌汁が置いてあった。


「これ作ったの？」


目を丸くする私に彼は言った。


「飲みすぎた次の日は消化のいいもの食べたいじゃん。」

味噌汁に口をつけると、想像以上においしかった。

「嵐くん、なんでうちにいるの。」

嵐は言った。

「伊織ちゃんが行くなって俺を引き留めたでしょ。誰かと間違えてさ。こういうの初めてじゃないけど、セックスしなかったのは伊織ちゃんだけなんじゃない。」

よかった。
嵐とは何もなかった。

「ユウイチって誰？」

嵐が私の顔を覗き込む。
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表紙・目次

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