ギブ・ミー・ヘブン
「知らないの?まぁ、みちるちゃんは夜長くないもんね。一緒に歩いてるところを見られたら大勢の女の子の妬みを買うわよ。」

「いやいや」

嵐が困ったように笑う。

そんな有名人だとは知らなかった。



しばらくお酒と会話を楽しんで嵐は帰って行った。


「どこで知り合ったの?」

ママのは興味津々といった感じで私の顔を覗き込んだ。



「お向かいなんです。」

と答えるとママはびっくりしつつ、こう言った。


「あまり近くなりすぎない方が賢明だと思うの。」


「そうですね。あまりに世界が違いすぎて・・・。」





私には嵐のことなど全くわからない。

ただ、あの瞳の奥の暗闇が気になっていた。

華やかな外見と相反する影を湛えた瞳。




生きている世界が違うとわかっていながら


私は既に嵐の瞳に吸い込まれていた――










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