ギブ・ミー・ヘブン

「あれ、伊織サンでしたよね?デートですか?」

何か言いたげな顔をして蓮くんが私を見ている。

「そんなんじゃないない。ね、嵐くん。」

蓮くんはそんな私をスルーして言った。

「そういえば【ON】の代表も来てますよ。」

【ON】とは嵐の店の系列店だ。

それを聞いた嵐が

「ちょい挨拶してくるね。」

と席をはずす。


「伊織サン、嵐さんと付き合ってるんですか?」

突き刺さる視線―

「だから、そんなんじゃないの。」

この子は何が言いたいんだろう。
イライラし始めた時、蓮くんが口を開いた。

「差し出がましいお願いなんですけど、嵐さんのそばにいてあげてください。嵐さんがプライベートで女の人をそばに置いてるのはじめて見ました。嵐さんを頼みます。」

予想外の言葉に戸惑う。

「あのね、私と嵐くんは本当に特別な関係とかじゃないの。」

蓮くんは


「嵐さんの理解者でいてあげてください。僕は帰ります。」

と言って店から出て行った。


入れ替わるように嵐が戻り、カクテルが置かれる。


「おぉごめん。」

嵐がまた隣に座る。


「ほら飲もうよ」

グラスを持って嵐に近づける。


「乾杯」


グラスがきれいな音をたてた。
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