ギブ・ミー・ヘブン
嵐は急におしゃべりになった。

「蓮は、俺の大事な弟みたいなもんなんだ。」

そう言いながら寂しそうな顔をした。


「どうしたの?」


嵐の顔を覗き込むと



「出よう。マジで酔いすぎた。」


チェックを済ませて店を出た。


外はまだ暗い。


タクシーに乗ろうとした時、


「少し風に当たりたいから歩こう」


そう言って大通公園まで歩いた。
公園までの間、嵐はずっと歌を口ずさんで私の手を引いて歩いた。
無邪気な子供みたいに。





公園に着いたころにはうっすら明るくなっていて、きれいだね、と言いかけた時、嵐が言った。


「俺は蓮から大切なもの奪ったんだ。」





何の事だかわからない。
でも、聞き返すことが出来ない。
ただ嵐を見つめるしか出来ない。

嵐の顔がどんどん歪んで


その時


嵐の瞳から大粒の涙が落ちた。













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