ギブ・ミー・ヘブン
ベッドに投げられる。


まさか


まさか


嵐は私と寝る気でいるのかもしれない。



そう考えていた矢先


「俺、セックスできないんだ。」

と言うので恥ずかしくなった。



「俺ね、金が絡まないとセックスできないの。おかしいでしょ?勃たないの。21歳だよ俺。金に興奮してるのかもね。」



嵐の瞳がまた暗くて深い闇を湛えている。




「21歳とはびっくり。大人びてるから25~6歳くらいかと思ってた。お金に興奮するのもびっくり」


嵐は肩をすくめた。


「伊織ちゃんはセックス込みじゃないとそばにいてくれないの?」



「バカだね暁は。」


初めて暁の頬に触れた。


「体を重ねても気持ちいいのは一瞬でしょ。そのあとが空しい。嵐だってお金の絡むセックスしても気持ちがいいのは一瞬で、排泄でしかないんじゃないの?もしも私を本当に寂しさからじゃなく欲しいと思う時がきて、私も寂しさから嵐を求めることがなくなっていたら流れにまかせればいいよ。今、嵐じゃない暁と寝てもお互いにいいセックスできそうにないじゃない。」


嵐は驚いたような顔をして私を見つめている。


「私だって甘えてる。雄一を忘れるためにも、暁を利用してる。」


暁は「ちょうどいいね」と笑ってベッドへもぐりこんだ。



私の手を握って暁は



「ありがと。」


そう言って、あっという間に眠りに落ちた。






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