ギブ・ミー・ヘブン
「えぇ?」



いきなりの申し出に驚いた私に言った。



「今すぐ。こういう客を甘く見たらダメだって。」



あまりにも突然すぎる。



「でも…」



戸惑う。いきなり一つ屋根の下なんて。



「もう、なくしたくないんだ…。」


暁は小さく呟いた。





「何を?」



私は聞き逃さなかったが、




「いいから。早く荷物。」



そう言って、窓の外を見ている。







この時、ちゃんと聞けばよかったんだ。





聞いていたら、私は暁の痛みを少しだけ分け合えたのかもしれない。



気になっていたのに聞けなかった。



どんなに親しい間柄でも、恋人同士でも、知る必要のない事がある。



そう大人ぶっていた。




知りたい気持ちを抑えながら、私は聞かなかった。
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