ヤンデレ
 次の日。



 裁きはどのように食らうのか。私が死ぬことでその裁きが下さられるのならそれでも構わない。僕はそう決めた。



 僕が死ぬときに、ご主人様の近くで死ねればいい。愛した人の近くで死ねることが僕にとって今、考えられる最高の幸せだ。



 午後一時を少し回ったところで携帯の着信が鳴った。電話の主は一条。どうやら家の前まで来たようだ。



 ご主人様はすぐに彼女を出迎えに行った。そして僕はいそいそとご主人様のベッドの下に隠れる。覚悟はしているが、それでも死ぬのは怖い。一条はどうなのだろうか。



 ご主人様がやってきた。すぐ後ろから一条も。そして僕はぐうっと奥歯を噛んだ。



 彼女はとても美しかった。同世代の女の子からは可愛いではなく、綺麗と認識される顔立ちであった。美少女ではない美女だ。それは猫である僕にもすぐに分かるほどだ。それ故、左目の白い眼帯が痛々しく見える。



 一条はまだ慣れていないのか、距離感がつかめず物をつかみそこねたり、ぶつかったりの連続である。それをフォローすべくご主人様が手をとって彼女を導いたり、手を触れてまで物を渡そうとする。もう完全に二人はお似合いである。



「ねえ?太一君。私たち学校卒業したら……結婚しよ?私、この目じゃ誰かに頼らないと生きていけない……」
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