ヤンデレ
 突然の一条の告白だった。ご主人様はもちろん、僕もびっくりした。



 そしてご主人様は一条のプロポーズを受け入れた。



 僕はご主人様と一条のやり取りをこれ以上みているのは辛かった。胸が苦しむばかりだ。そっと出て行って、彼女の見えない死角から抜け出せば大丈夫だろう。



 僕は音をたてずにそっと廊下に抜け出した。



「何で逃げたの?」



 後ろから女の声が聞こえた。廊下には一人しかいない。そう一条だ。なぜ彼女は知ることが出来たのか。ご主人様は気にした感じもない。あの人ならすぐ出て行ったのを分かるはずだ。



「お手洗いなら反対側ですよ?」



「違うのよ。あなたとお話がしたかったの。フィー。さんだよね?」



「なんで僕の名前を知っているんですか?」



「簡単な話よ。太一君から教えてもらったの。すごくかわいい猫ちゃんだったから覚えていたの」



 僕は振り返る。その表情は憎しみというよりも微笑んでいる感じであった。



「あなたのおかげよ。あなたのおかげで太一君を私の物に出来たわ」



 一条が何を言っているのか、全く分からない。ただ子供のように嬉しそうな表情である。



 そして、彼女はおもむろに左目の眼帯を外す。すぐに僕は目をそむけた。どれだけ生々しい傷跡が残っているのか。そう考えただけでも吐き気が止まらない。



「見なさい。これがあなたの付けた傷よ」



 そう言って彼女は僕のあごを持ち上げて無理やり見せる。そして、



 ――――――!
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