ヤンデレ
 悲鳴を上げようとしたギリギリの所で一条が口を塞いだ。そして、良く見ると目玉が三つある。一つは彼女が持ち、そして両目の部分に。



 左目は昨日見た目と大して変わっていなかった。



「えっ?なんで三つも?それよりもあなた、目が見えないなんて嘘なの?」



「今頃気づいたの?おバカさんね。所詮は猫ね……。そうよ。失明なんかしていないし、あなたの攻撃で傷なんか食らってないし」



 いけしゃあしゃあと子供のネタばらしのような笑顔で僕に話しかける。でも、なぜ一条は僕にそんなこと話すのだろうか。



「それじゃあ、ごゆっくり……」



 僕は、ゆっくりとその場を後にしようと去ろうとしたが彼女の、待って。で私は足を止めてしまった。



「言ったよね?私、『あなたとお話がしたかった。』って。まだその『お話』は終わってないよ」



「まだ何かあるんですか?」



 僕はさっさとこの場を立ち去りたかった。それなのにまだ一条はまだ僕と話したいことがあるらしい。僕はもうこの場にいたくない。一条とご主人様のやり取りを見ていると、自分の負けを認めるようで嫌だからだ。



「これからが大事な話よ」



 そう言って取りだしたのは袋であった。今度は何を隠しているのだろうか。もう大抵のことでは驚かないつもりだ。
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