ヤンデレ
 一条が取りだしたのは、ナイフだった。それも刃渡りの長いサバイバル用にも使えそうなものだ。



「だ、大事な話でしょ!何でそんなもん出すのよ!」



 僕は強がってはいるが、腰は砕けただ一条の出しているナイフだけを見ていた。



「そうよ。大事な話。あなただけにしか言えない話なの。ゆっくり聞いてくれるかしら?」



 一条は何を思ってか、ナイフの刃の部分を舐める。そして、



「普通さあ、あんな話を聞かされてどう思う?」



「どうって、どういう意味よ?」



 質問の意図が分からない。そして一条の目的も分からない。



 一条は察しの悪い僕に対して大きな溜め息をついた。



「所詮は人に近い猫ってところか。よかったね。太一君に拾ってもらえて。そうじゃなかったら、お前死んでたよ。――でももうすぐ死ぬからどうでもいいか」



「えっ?どういう……」



 まだよく分からない僕に一条はかなりいら立っているようだ。



「あなたよっぽどのバカ?それとも事実を認めたくないだけなの?もういいわ。はっきり言うわ。――死んで」
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