ヤンデレ

　そして気が付いたら僕と一条は密着していた。鋭い痛みが胸を付いた。そして灰に残っていた空気が無理やり外に出て行った。胸には先程のナイフが刺さって血を流していた。



「えっ？」



　全身から力が抜ける。そして体重を支えきれなくなりその場に倒れ込んだ。心臓の鼓動と同時に血が体から抜けていく。それと同時に今まで普通に聞こえていた鼓動も弱く、間隔が長くなっていく。



「そもそも、私があなたに不利になるような話をただですると思ったの？おバカさん。一方的で悪かったでしょうけど、あなたが気に病まず逝けるんだからお安いものよね？」



　もう感覚がない。浮いているような感覚さえする。もう体を動かすことすらできない。最期の人間がこいつなんて最悪すぎる。せめてご主人様を見て逝きたかった。



「残念だったわねえ。もう太一君は私のもの。もう誰にも近づけさせないわ。例えあなたの死肉でも絶対に近寄せないわよ。でも今はおやすみ……」