ヤンデレ



 僕は泣いていた。大きな声で泣いた。でも誰もこの声にこたえることはない。



 ――私は猫だから。私が猫だから。人間だったらご主人様と結ばれていた。でも私は猫……。それはもう逃げられない運命。



 僕はその日、夜が明けるまで泣き明かした。



 次の日。ご主人様はどうやら僕のことを構いもせずに出て行った。いつもは声をかけて出て行ってるのに……。



 今日は日曜日。人間世界では休み。らしい。猫の僕には関係のないことだ。



 僕はそっと家を出て、外の世界に散歩することにした。猫だってたまには運動をしないとすぐに太るんだ。そこは人間も猫も変わらない、乙女にとってのジレンマだ。



 ご主人様の町内を抜けて街の目抜き通りへ。かつて前の主人と一緒に歩いた散歩道を歩く。そして、



「あっ、ご主人――」



 そこで言いかけた途端、ご主人様の隣に誰かがいた。女性だ。そして……。



 ――嘘っ!そんな!ご主人様が!女の人と……!



 僕の目に映っていたご主人様の姿は、隣りにいた女性と一緒に腕組みをして楽しそうに歩いていた。茶色の髪を軽くウェーブさせ、白いサマードレスがとても目を引くが、二人のいちゃつきの方が目立つため、服装はやや存在感が薄く感じる。



 ご主人様の右手には一つのソフトクリーム。それを嬉しそうに二人で食べている。



 僕はご主人様とは反対方向に逃げた。



 受け入れたくない現実が壁のように立ちはだかった。目の前で楽しんでいる女性は、確か――
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