ヤンデレ
「きゃっ!ちょっとどうしたの?電話終わったら遊んであげるから!――えっ?猫よ。可愛いのよ。写真にとってあげたいんだけど、ちょっと無理そう。ごめん切るね。また明日!」



 あいつは通話を終えた。そして私を抱き上げた。あいつの可愛らしい笑顔がすごく憎たらしい。



 もしあいつの顔を引っ掻いてやったら、あいつはご主人様と会うのを止めてくれるだろうか。適当な理由を付けて会うのを拒んでくれるかもしれない。そうしよう。あいつが顔を近づけてきたら。



 そう言っているうちにあいつは顔を近づけてきた。そして……



 僕は引っ掻いた。しかし、僕の予想をはるかに超える場所を引っ掻いた。



 僕の目の前に映るのは――



 必死に左目を隠している一条。物凄い悲痛な叫びだ。耳を塞いで、目を覆いたくなるような惨劇になってしまった。



 指の隙間から流れるやや黒がかった赤い液体。血だ。それもじわじわとホラー映画のような嫌な速度で流れる。



 どうやら私は彼女の目を引っ掻いてしまったようだ。とんでもないことをしてしまった。私はどうすることもできず、その場から立ち去ることしか出来なかった。


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