かくれんぼ
蒼もきっといろいろ乗り越えてきたんだろうなぁとその横顔を見つめる。再会したときは何も変わってないと思ったけど、蒼の中で確実に何かが変わったんだ。異国だもの、きっとこっちで生活するより何倍も苦労があったに違いないと再び繋いだ手を握りしめた。蒼の手もすこし熱を帯びた気がしてわたしのほてった気持ちはまた熱くなった。

「着いたー!!入ろうぜ!!」
と蒼がズボンをまくって川に入る。わたしもつられて急いで入る。
「冷たいねー。あ、ほらこの辺昔ザリガニ探したとこだよ。」と川の中を歩いたとき岩に生えた苔を踏んでしまった。
「きゃっ」
あーせっかくのお気に入りのワンピースが台なし・・
と思っていたら
蒼がわたしを抱き抱えるような形で支えてくれた。
「っぶなー昔来たときもこうやってこけたの忘れたの!?よかったー今度は支えられたわ」
そういえばあのときも蒼は支えようとしてくれた。わたしの方が体が大きくて結局こけちゃったけど。
蒼の前髪が頬に触れる。くすぐったくて思わずぎゅっと目をつぶる。いや、それだけじゃない。この距離で蒼をもう直視できない。
気づいていたとっくの昔に。蒼がわたしにとって幼なじみ以上の存在になっていたことを。ずっと側にいたから伝える必要さえないと思ってきたことを。離れ離れになったときその喪失感に打ちのめされたことを。
わたしはやっぱり蒼が好き。大好き。
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