かくれんぼ
願い
翌日、目が覚めるともう10時を回っていた。
過呼吸になった翌日はいつもこんな感じ。けだるさにつつまれる。
朝ご飯を無理矢理口に運びながら
「お母さん、今日ちょっと出かけてくる」
と言うと、
「昨日倒れたばっかりなのに大丈夫なの?一応病院行っておかない?ここ二、三日ちょっと様子が変だし・・・」
余計な心配をかけたくなかったので
「大丈夫、多分ちょっと暑さにばてただけだから。夕飯までには戻るし。」
これだけ言えばもう何にも言ってこないはずだ。余計なストレスは過呼吸を招くとお医者さんに聞いてからわたしの両親はわたしに対して強くでなくなったからだ。
「今日は葵のお誕生日パーティーするから早めにね」


12時までがすごく長く感じる。蒼の話したいことってなんだろう。やっぱり昨日の返事かな。期待はできない、だって蒼なら、蒼もわたしのこと好きならその場で答えてくれるはずだ。
離れ離れになるまで確かに蒼はうぬぼれじゃなくわたしが好きだったと思う。二人で過ごす毎日の中でそれは自然に伝わった。時間と距離は人を、気持ちを変えてしまうのだと思うと自然と涙が出てきた。

「誕生日かー」
蒼も昨日言っていた。今日はわたしの18歳の誕生日。
「別にうれしくもないよなー」と久々に5年カレンダー(蒼の父親が珍しいからとくれたものだ)をめくる。
そこには大きくハートで囲ってある今日の日付。

「なんだこれ?今日なんかあるんだっけ?」
頭を悩ませているもののここ数年大した交遊関係もなく、予定といえば定期検診くらいだったので全く思い付かない。

そもそもなんでわたしは定期検診を受けているんだろう。
偏頭痛や過呼吸は突発的なものだし、定期的に検査するものじゃないよなぁ・・・

そういやお医者さんは心因性のものだっていつかお母さんに話していた気がする
病院に通い始めたのは三年くらい前からで・・・

ズキン
頭に何か落ちてきたような鈍い痛み
まるで考えるのを拒否しているみたいだ。
今日は何があっても出かけるの。蒼に会うの。
時間はもう待ち合わせの10分前になろうとしていた。
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