かくれんぼ
久々の全力疾走に息を切らしていると突然

ぐいっ。

急に腕を捕まれてそのまま路地に連れ込まれた。
神様はなんて非情、乙女の最後の望みまでも絶つ気なのだろうか。
こんなことなら母親の言い付け通り防犯ブザーを持っておくべきだった。

「助けて!!」

びっくりするような大声を発したわたしの目の前にいたのは

「蒼・・・」

三年前と変わらない、笑ったらなくなりそうな目元も、小生意気そうな口元も、そこらの男子よりちょっと低めの身長も、なんら変わらない蒼の姿があった。

「蒼・・・なんでこんなことするの!!びっくりしたじゃない!!」
わたしは泣きながら叫んでいた。もちろん嬉し涙だけれど。

「やー連絡しようと思ったんだけど、やっぱできなくてさぁーで、葵の姿見つけたから思わず掴んじゃった」
いたずらっぽい表情で言い訳するのは蒼のくせ。
わたしがずっとずっと見たかった顔。

メールくれたくせになんで連絡できなかったんだろうなんてその時は微塵も思わなかったんだ。
< 4 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop