かくれんぼ
ぷっと蒼は笑った。
あ、目がなくなったとわたしが見つめていると、蒼は繋いでいた手を離してわたしの頭においた。
「ありがとう、葵。そうだよなー諦めたら終わりだもんなぁ。俺、親父が航空関係の仕事してて、小さい頃から憧れてたんだ。」と目を細めて蒼は言う。未来の話をしているのになんだか顔は懐かしそうだった。
「そう言う葵は何かあるの、将来なりたいものとか」

急にひやりと胸元が冷える。
そんなものあるはずない。蒼がいなくなってから三年間、わたしの毎日は灰色で、靄の中を歩いているようだった。そんな中を歩くだけで精一杯だったのだから。
「んーと、考え中!!やりたいことが多過ぎて決めれないんだよね!!」と繕う。蒼の前では純粋で明るい「葵」でいたいんだ。
「今、決めれなくてもいいんだよ。どんな道に進んでも必要なときに必要な出来事は起きるから。それを越えたらまた次に進むんだよ。越えれないうちはまだ次に進む時期じゃないってだけ」
と話す蒼はなんだかすごく大人に思えてわたしは自分が恥ずかしくなった。
「だから越えられない自分を攻めなくていいし。諦めなければ越えられるときがくるから。・・・って親父が言ってた。」とにんまりと笑う。
わたしはそのあどけない笑顔にひどく安心して
「そうだよね。」と笑い返した。
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