愛情狂現





「……春?」





困ったように秋が顔を覗き込む。





私はふるふると頭を振り、心配しないでと呟いた。





本当に泣きたいのは君なのに。





身勝手な私は君に甘えてばかりだ。





秋の強い眼差しを横から眺めて、もう一度視線を前に戻す。





冬の夜は身を切るように寒いと言うけれど、今はそんなもの感じなかった。





何も感じない、空虚な時間。






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