愛情狂現







私は用意していた小麦粉の大袋を、瓦礫の下から引っ張り出した。





「―――秋、聞こえる?」





本当は聞こえてなくてもよかったのだが、秋の耳にはちゃんと届いたらしい。





うん、と小さく返事が返ってくる。





その間にも私は、袋の封を切り始める。





「そこに、母さんと父さんはいる?」





しばらくの沈黙。





「……うん、火事でも焼けなかったみたいだね。綺麗に残ってるよ」





腐敗してもいない。





忌々しげな口調でそう続けた。





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