愛情狂現
あの日聞いた嗤い声が耳の奥で木霊する。
最近はずっと大丈夫だったのに……。
こんなに小さな合図で私の心は壊れてしまいそうになる。
『秋は元々欠陥品だから』
昔母が私に言ったこと。
『双子なのにどうしてこうも違うんだろうな』
昔父が私に言ったこと。
でも、残念ながらあなたたちは間違ってた。
欠陥品は秋だけじゃない。
私だって、あなたたちの特殊な栽培によって生まれてしまった失敗作だ。
今だけは秋の顔を見たくなかった。
気がつくと私は逃げるようにしてリビングを飛び出していた―――。