愛情狂現
第二章




秋から許しが出たので、久しぶりに外に出てみた。




何年ぶりだろう。




外はもうすっかり寒くなって、空は雪が降り出しそうに曇っている。




あの大量殺人事件はすでに忘却の果て。




件の廃倉庫の前には、荒んだ立ち入り禁止の看板が立てられていた。




深く深く、肺いっぱいに外の空気を吸い込む。




冷たい空気が肺に満たされ痛いほどだ。




懐かしい感じはしない。




あの頃は毎日が楽しかったはずなのに。




所詮その程度だったんだろう。




長い年月の間に薄れてしまった感情。




でも希薄な中にもやっぱり哀愁はあるようで、道を歩いていると涙がにじんでくる。




ずっと願っていた。




こんな普通の生活を。




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