愛情狂現




ふいにあの人の顔が脳裏をよぎる。




「……涼くん、元気?」




「え、あー、涼さんなら元気だよ」




どこか歯切れの悪い長谷川君。




どうしてそんなことを聞くのか理解できないようだ。




「そっか、それならいいんだ」




私はなるべく心中を悟られないように微笑を湛えた。




涼くんは、私の本当の想い人。




こうなることが頭のどこかでわかっていたからこそ、秋には教えなかった。




偽りの彼氏だったクラスメートには悪いけど。




「あ、そうだ」




明後日の方向を見ていた私に、長谷川君が思い出したように尋ねる。




「秋は、元気にしてる……?」




そういえば長谷川君だけは熱心に秋に話しかけていたような記憶がある。




当の秋は相手にしてなかったけど。




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